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話題の人InterviewインタビューIf-ZEN代表マッシモ・サビオン氏日本の温泉地だけが持つ「心を癒す力」マッシモ氏は、イタリアの一大温泉保養地アバノ・モンテグロットの温泉ホテル協会元会長で、元アバノ市副市長。5月に開催された「世界温泉地サミット」於大分県別府市)で、温泉保養地が提供する医療・美容・健康について講演を行った。来日中のマッシモ氏に、同氏が考える日本の温泉地のチャンスについて聞いた。ます。それぞれのホテルにある源泉からは90度の高温の温泉が湧き出ています。インドアやアウトドアの温水・冷水プールも完備しています。どのホテルも、メディカル(治療目的)とリハビリテーション、ウエルネス(ボディ、ビューティ)のトリートメントが用意されています。メディカルトリートメントは、ファンゴ(温泉泥)マッサージ、蒸気浴を中心に構成されていて、ドクターの処方箋があれば、保険適用として年二回ファンゴ(温泉泥)と温泉水のテラピーを受けることが出来ます。泥の品質については厳格で、パドバ大学が週に一度チェックし管理をしています。午前中に目的のトリートメントを受けます。午後はフリーにして、ワイナリーやグラッパの蒸溜所見学といったエスカーションや、ノルディックウォーキング、自転車などのアクティビティに参加します。一週間の滞在だと午前中はトリートメント(6回)午後は3回分のエクスカーションを含めたパッケージで提案しています。宿泊客の7~8割の方がこうしたパッケージ客で、その6割は女性です。40歳以上の方が多いですね。一日の費用は、宿泊とトリートメントを含めて、三つ星ホテルで120ドル、五つ星ホテルだと400ドル程です。メニューは沢山用意していますが選択の自由度を心がけています。 これからの日本の温泉地にとってターゲットは?世界を旅すると、どこもアジア各国からの観光客で溢れています。しかし日本はこれからオリンピック・パラリンピックやラグビーワールドカップの開催も控えていますし、元々日本文化に関心の高い欧州の各国に対して、もっと観光のアプローチをすべきだと思います。最近は泊り客の7割以上が外国人という旅館もあると聞きました。3~4連泊の客も少なくないと。滞在中に外食も選択できて、アクティビティやトリートメントが充実していると、もっと楽しめるでしょう。欧州の客はそういう日本の旅を求めています。わたしは、九州の温泉地で街歩きをして畳を縫っているところに出くわして4時間ほど見とれていました。以前にも北陸で和紙を梳くのを見たことがあります。初めての体験。伝統文化と出会える旅です。また、一泊100~150ドルクラスの温泉旅館の情報をもっと発信することです。実は、一般的な欧州の旅行者はこの価格帯の旅館はリーズナブルで泊まりたいのにネット上で見つけられないのが現状です。口コミだけが頼りになっています。一方で、超富裕層向けの最高級の旅のパッケージもありません。今ある高級よりもっと高級なトップコレクションが必要です。温泉と食事、自然、それと、伝統的な文化。その魅力で外国人だけでなく、日本の若い世代も呼べるはずです。待っているだけでなく、プランを作り情報をもっと発信しましょう。イタリアやドイツに比べて身体のケアのプログラムやサービスが少なく感じます。日本の温泉にマッチしたマッサージや物理療法やリハビリテーションを加え、こころと身体のケアサービスにミックスできるといいですね。日本の温泉地では、自然の中でスローライフやスローフードを楽しめます。どこに行っても素晴らしい水があります。ピュアで、クリーンで、美味しい水です。だから田畑で採れる食材も美味しい。これらを維持するためにも、地域の行政と温泉旅館が一体となって自然や街の景観を守る法律を作る活動も重要でしょう。日本の自然や歴史や文化や、何より「日本人のこころ」はとても豊かです。そのことに気づくべきだし、もっと大切にしなければなりません。そしてストレスフルな現代、そして量から質への転換の時だからこそ、世界に向けて日本の温泉地のことを発信すべきだと思います。MassimoSabbion(まっしも・さびおん)アバノモンテグロット温泉ホテル協会元会長、元アバノ市副市長、プレジデントホテル・テルメ元オーナー。現在は、丘隆地に心身の健康を回復できるB&Bを開業。ポスト・ウエルネスとしての温泉と自然の力の可能性を模索する。12日本の魅力はどこにあると? 温泉地そのものが日本の魅力だと考えています。私のいるイタリアのアバノではファンゴ(泥)パックという優れたメディカルテラピーがあります。健康にとって最高です。でも何かが足りない。それは安堵や安らぎといった精神的なもの。日本の温泉地はそれがあるのです。自然の景観に溶け込んだとても小さな集落。浴衣姿で温泉街を歩くことも非日常の楽しみです。高級旅館でなくても、日本の温泉旅館にはホスピタリティが溢れています。毎日の仕事が忙しく、家族との会話もままならないような人が温泉旅館に一歩足を踏み入れて感じるリッラクス感。そして料理は、見た目も美しく、品の良い盛り付け。食材はとても厳選されています。全てが寛ぎの空間です。これこそが日本です。 アバノ・モンテグロットの温泉保養について?我々の温泉保養地アバノ・モンテグロッタ・テルメへは年間100万人の観光客が訪れています。その6割は欧州からの外国人客で、ドイツ、フランス、スイス、英国などからです。温泉地一帯には120のホテルが建ち20,000ベッドを有してい