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不足を指摘する。健康長寿社会、生涯現役社会実現のための「健康経営」「生活習慣病予防」、食や運動、睡眠など「若年女性のライフスタイル改善」、見直しが始まった「働き方」や、過度な情報社会の「ストレスケア」など、実力のあるスパが受け皿となれるチャンスは多い。仕事や家庭で疲れが溜まっている人や、リフレッシュやリセットでもっと仕事や生活のパフォーマンスを上げたい人がスパを必要としている。スパはこれらのニーズに応える場所であることをもっと発信しなければならない。セラピストの技術・知識レベル向上とプログラムのエビデンス強化当然そういったリフレッシュやリセットの目的に応えるためのスパでは、スパセラピストの高い技術や豊富な知識、高度な接客力が要求される。わざわざ休暇をとって目的のリゾートのスパに行くためには、現地にスパサービスを含むエビデンスのある充実したウエルネスやビューティのプログラムが必須だ。イタリアの温泉保養地で知られるアバノ・モンテグロットの温泉ホテル協会元会長マッシモ・サビオン氏は、日本の温泉地自体が備えている魅力を認めながらも、欧州に比べて過ごし方の提供メニューの少なさを指摘する。医療からウエルネス、ビューティの目的に合った多彩なトリートメントメニューを用意して滞在中のパッケージとして発信することを勧める。そして、温泉、食事、自然の中のアクティビティ、伝統文化と触れるエクスカーションとを丸ごとパッケージにすべきだと言う。10年前から繰り返し言われてきた、本格的なディスティネーションスパ(滞在・目的型)の登場がスパ産業の次のステージへの大きな鍵となりそうだ。業界では人材不足さらに深刻にセラピスト不足の課題は一向に解決されず、技術者の横移動が果てしなく続いている。NPO法人日本スパ振興協会の岡田友悟理事長は、外国人労働者の規制緩和の対象にスパセラピストも重要な候補となるのではとし、行政への働きかけ方を模索している。■外国人の都道府県別延べ宿泊者数(平成29年1月~12月(速報値))と前年比上位15(単位:人泊)宿泊旅行統計調査(平成29年年間値速報値)/観光庁作図:月刊ダイエット&ビューティー施設所在地延べ宿泊者数前年比施設所在地延べ宿泊者数前年比施設所在地延べ宿泊者数前年比1112131415鳥取県山形県群馬県埼玉県宮崎県香川県139,73039.3%117,83033.6%285,57033.2%222,150310,250453,46031.1%26.5%鹿児島県715,32048.7%秋田県岩手県福島県徳島県98,40047.0%193,04046.2%113,86044.4%96,87039.5%6789256,81060.3%1,317,33059.3%379,15051.9%787,17051.7%423,15050.2%10青森県大分県佐賀県熊本県岡山県123452020年に向けて、全国各地のホテル開業ラッシュが止まらない(P3表1参照)。そのほとんどのホテルでスパが併設されているという。訪日外国人客増加に伴い客の7割が外国人というスパも登場してくる一方で、スパをライフスタイルにする国内リピータ層が登場、いよいよ本格的なスパ市場形成が始まった。2020年に向け急増する訪日外国人客をターゲットに2006年5,700億円と発表(経済産業省)されたスパサービスの市場規模は、その後08年7000億円市場に成長を遂げ、一兆円を突破するかと期待は高まった。ところが、その年のリーマンショック後、スパ売り上げを支えていた外国人ビジネスマンやスパブームをけん引した若年女性層は潮が引くように姿を消し、業界は低迷期に入る。2013年9月「2020年東京五輪開催決定!」の一報がそのムードを一変させた。目指すGDP600兆円への大きな原動力とされる観光立国化によって訪日外国人観光客獲得の動きが高まった。13年1,000万人だった訪日客数は、昨年2,800万人を突破するまでに急増。都市部だけでなく地方への移動も活発になっている(右下図)。各地のスパ施設の利用客も徐々に増加していった。いまや、都心のシティホテルや地方の温泉旅館のスパでは、半数以上が外国人客といった施設も珍しくない。スパサービスの品質を気にかける外国人も増えており、セラピストの資格を聞く客も出てきたという。市場は確実に成熟に向かっている。目的型の国内スパリピータ市場が確立?!国内にも多様なスパ利用者がいる。リゾートで旅の思い出にスパを選ぶ人、滞在中のオプションの一つでスパを選ぶ人、年に一度自分へのご褒美と称してシティホテルで豪華スパを受ける人。ホテルのお得なランチセットでスパを受ける人。出張先で疲れを癒すためにマッサージ代わりにスパを受ける人。カップルや親子でのスパデート。スパのオペレーション会社によると、ここ数年、国内の定期利用者が着実に増えてきたという。月に一回、月に二回は、都内デイスパや会員制スパに通う層、1年に数回1週間の休暇をとって、リゾートでじっくりスパを受ける層。激務を続けるビジネスパーソンが、心身のメンテナンスやリセットを目的に通うコアな層だ。現在、スパブランドYON-KAとデイスパ「レスパスヨンカ表参道」の展開やスパコンサルを手掛けるヴィセラ・ジャパン㈱の武藤興子氏は、この層に着目し「まだ本来のスパ潜在層にリーチできていない。スパの役割、スパを受ける目的をきちんと伝えきれていない」と業界の努力「スパのある暮らし」実現へスパの「役割」・「目的」をもっと発信する2特集スパ